Les Bains Douches 18 December 1979

★★★★★:ニューウェイブ / マンチェスター

Les Bains Douches 18 December 1979

Les Bains Douches 18 December 1979

 ジョイ・ディヴィジョンの手持ちのアルバムの中でも一番好きなCD。落ち込んだら聴く。M1-M9は、1979年、パリでのライヴ音源、M10-M12は、アムス、M13-16は、オランダ、アインドーフェンでの音源。時期的には、Unknown Pleasures(発表:1979年)とCloser(発表:1980年)のちょうど中間に位置する。
 ジャケットはちょっと手抜きっぽいし、音質は、たいしてよくはないが、テンションは、異常なほど高い。おすすめは、はっきりいって全曲といいたいけれど、強いて言えばDigital、Atrocity Exhibition。アルバム全体を何度繰り返し聴いても飽きのこない恐ろしく力強く、暗く、絶望的なダルさの爆発という感じに癒される。

Disorder/ Love Will Tear Us Apart/ Insight/ Shadowplay/ Transmission/ Day Of The Lords/ 24 Hour/ These Days/ A Means To An End/ Passover (Amsterdam 1980)/ New Dawn Fades (Amsterdam 1980)/ Atrocity Exhibition (Amsterdam 1980) / Digital (Eindhoven 1980)/ Dead Souls (Eindhoven 1980)/ Autosuggestion (Eindhoven 1980)/ Atmosphere (Eindhoven 1980)

新学期操行ゼロ

★★★★★:1933年 フランス
ジャン・ヴィゴDVD-BOX

 
出演: ルイ・ルフェーブル、ジルベール・プリュション、ジャン・ダステ、ジェラール・ド・ベダリウ、デルファン

 モノクロ・パンク映画。これこそリアル・パンクなどと言ってみる。ジャン・ヴィゴはきっとピストルズを聴いていたはずだ、そしてこの映画を撮ったのだ、などと言ってみる。ちょっと信じ難いが、世の中には信じられないことがよく起こるからこれくらいの「事実/妄想」はあってもおかしくはないはず。
 列車の中で煙草を吸いまくる寄宿生コサ(ルイ・ルフェーヴル)とブリュエル(ココ・ゴルステン)。明日から陰鬱な新学期。校長先生(デルファン)はコビトで居丈高、そして問題が起こるのを恐れる小心者。学園モノの中で歩く規則、教頭先生(ロベール・ル・フロン)が、いい奴であることはめったにない。コサたちと列車の中で出会ったユゲ先生(ジャン・ダステ)は、結構いかした洒落モノで騒ぐ子供たちと一緒になってチャップリンの物まねをする、逆立ちしながら動く絵を描いて魅せたりする、子供たちを引き連れて遠出して、出会ったお嬢さんに声かけたり。
 騒ぎ、はしゃぐ子供たちは「操行ゼロ」にされると外出できない。だけど騒がずにはいられない。特にコラン、コサ、ブリュエルの3人はお偉方をまとめてやっつける計画に夢中。でも粗末な豆のスープに怒った子供たちの騒ぎをコランが鎮めるのは、その豆のスープを作っているせいで罵られたオバサンが、騒ぎの中で悲しげにうつむくある生徒(名前失念)の母親だったから*1。 
 タバール(ジラール・ド・バリュドゥー)は、女の子のようなカワイコちゃんだが、手を握ろうと寄ってきた生物の先生にくそったれと言い放ち問題になる。悔い改めたら許してあげようともみ手しながら擦り寄る教頭と校長にも「くそったれ」。
 その夜、寄宿舎で大騒ぎ、枕が散る、布団が破れる、羽が散る。監督官の先生のベットを立てて置いて戴冠したアナーキストたち。美しいスローモーション。
 その翌日、お偉方がまとめて集まる学園祭。コランたち3人+タバールは屋根の上から次々とモノを投げつける。驚き慌てふためき逃げ惑う校長たち、ユゲ先生だけは楽しそうに手を振っている。一通り爆撃が終わって、屋内では頭を抱える大人たち、屋根の上には並んだ4人の気持ちよさ気な姿。そしてFIN。

*1:H.ミラーの「北回帰線」にもフランスの高等学校の寄宿舎で出た粗末な豆のスープについて記述があったはず。「昼食には、インゲン豆かフジ豆、それに食欲をそそるように見せかけるために小さな肉片が投げ込んであった。囚人か岩堀人夫の食い物である。(中略)カロリーはあるが、料理はなかった。」新潮文庫版「北回帰線」p.366