big loada

★★★★★:WARP系 / コーンウォール

Big Loada

Big Loada

 ついでに今更という気もしつつ、懐メロ。時折、思い出したように織り込まれる美メロと叩きつけるような過激な音撃、ちょっとラディカルかつユニークなセンスで90s後半、一気に巷のロックキッズを魅了したSquarepusherのミニアルバム。
 何もかも昇華し去るような美しさと虚無的なほどに強烈で破壊力のあるアナキックな激しさのブレイクビーツ乱れ打ちが雑居し、「共生」している。これを聴くと、あの時はやってたドランベの人たちがみんな有象無象に見えた。飽きの来ない長さも含めて、思い出の一枚。今でも愛して止まないのだけれど、ultravisiorなどの、ジャケセンスには、いつもちょっとした疑問は湧かないでもない。

A Journey To Reedham (7am Mix) / Come On My Selector / Full Rinse (Featuring MC Twin Tub) / Jacques Mal Chance (Il N'a Pas De Chance) / Massif (Stay Strong) / Tequila Fish / The Body Builder (Dressing Gown Mix)

up the bracket

★★★★☆:ガレージ-パンク / イースト・ロンドン

Up the Bracket

Up the Bracket

 秋の夜長に今は無きリバティーンズの2002年発売のデビュー作。ちょっとばかり俗っぽいメロが、荒々しくも切なく響き、心地よく聴ける。当時ストロークスとよく比較されていたが、明らかにストロークスの方が洗練度は、高かったと思う。
 逆にいうとThe Boy Looked At Johnny のようなチンピラ然としたいなたさが、よかった。Death On The StairsやTime For Heroesのオールドファッション・ドーナツのような素朴な甘さとUp The Bracketの灼けつくようなヒリヒリした喉ごしも好きだ。

Vertigo / Death On The Stairs / Horror Show / Time For Heroes / Breck Rd. Boys In The Band / Radio America / Up The Bracket / Tell The King / The Boy Looked At Johnny / Begging / The Good Old Days / I Get Along

美しきセルジュ

★★★★★:1957年 フランス 原題 / Le beau Serge
美しきセルジュ/王手飛車取り [DVD]

  • 監督:Claude Chabrol
  • 製作:Claude Chabrol
  • 脚本:Claude Chabrol
  • 撮影:Henri Decae
  • 音楽:Emile Delpierre
  • 編集:Jacques Gaillard



出演:Gerard Blain、Jean Claude Brialy、Micheie Meritz、Bernadette Lafont、Claude Cerval、Jeanne Perez、Philippe de Broca、Claude Chabrol
 Claude Chabrolが転がり込んできた遺産を用い、故郷で撮ったNouvelle Vague最初の長編作品。男たちの友情を扱った鮮烈なヒューマン・ドラマ。しかし、Bernadette Lafontの奔放な小悪魔っぷりにどうしても目が行ってしまう。

東京上空いらっしゃいませ

★★★☆☆:1990年 日本
東京上空いらっしゃいませ [DVD]

  • 企画:宮坂進
  • プロデューサー:海野義幸 安田匡裕
  • 監督:相米慎二
  • 脚本:榎祐平
  • 撮影:稲垣涌三
  • 音楽:村田陽一 小笠原みゆき
  • 音楽プロデューサー:安室克也
  • 美術:小川富美夫
  • 録音:野中英敏
  • 照明:熊谷秀夫
  • 編集:北沢良雄

出演:中井貴一牧瀬里穂笑福亭鶴瓶毬谷友子出門英竹田高利三浦友和、その他

 心残りがあると成仏できない。人気モデル、神谷ユウ(牧瀬里穂)もそんな無念仏。だから、この世界へと舞い戻り、何かを捜し求める―そして、彼女は、本当の愛を見つけ、なんて、そんなスジガキ自体は、実はどうでもよくて、この映画の牧瀬里穂の演技に惹きつけられる。ああ、アレだ。隠し砦の三悪人だ。あの上原美佐の演技だ。声の出し方、はしゃぎ方、いわゆる壊れ方がよく似ている、なんてのが、個人的感想。特にあのハンバーガショップ、あの場面のナガーイ撮影が、かなーーーりツンと来る感じ。それと、鈴木清順監督の『夢二』で好演していた、毬谷友子の演技も好き。
 あとは、相米監督の頻出キャラクター「花火」、なんか毎回花火を見ている気がする。無念仏と鶴瓶が出会う、ハザマの空間、アキラの幼稚園みたいな対決の間、ミュージカル仕立てのダンスシーン、別れ際の雨、車を降りた中井貴一を車の上にかかるスポットライトが照らし出す、全体的に様式美的な場面についての記憶が鮮明に残っている。
 

降霊

★★★★☆:1999年 日本
降霊 ~KOUREI~ [DVD]


出演:役所広司石田ひかり、きたろう、岸部一徳大杉漣哀川翔、磯部詩織、井上肇清水大敬戸田昌宏山本竜二、柏谷みちすけ、堀口一也、若林めぐみ、佐藤コージ、草磲剛風吹ジュン、その他

 音、色、光、痕跡的なもの/それらがざわめきたって画面への集中力を加速してゆくのは、消える、いる、いない、出てくる、だけど何故?そんなユーレイたちの物語だから。彼ら(それら?)を身にもたらすことの出来る降霊の霊媒ジュンコ(風吹ジュン)。そしてその夫(役所広司)は録音技師。その平凡な夫婦を襲う不条理な悪夢。それを転じて福となそうとするささやかな努力は、大方の予想通り事態をますます悪化させてしまう。
 誰もが、そうとは知らずに誰かを追い詰めていく、そういうプロセス。そして自ら自分の首を絞めるように、もがくふたりを、ゆっくりと軋みつつ砕いてゆく、あくまで、不条理で、システマティックな歯車に対する、役所の強烈な反撥。乗り越えがたいものを乗り越えようとする、そのためには自分の幻影すら焼き尽さんばかりの『オイディプス王』的な運命との戦い。しかし結局は、土の中から伸びた泥だらけの手に、追いつかれる、そういうドラマ。それは、現代においては、ほとんど不可能となってしまった、どこか崇高な悲劇の幻を垣間見させると同時に、どこか滑稽ですらある独り相撲的なやるせなさを感じさせる。
 また、風吹ジュンが平凡すぎるほど平凡な霊媒主婦を熱演。どうでもいいけれど「平凡な霊媒」って書いていてなんだか変な感じだ。でも、特別な能力を持つ平凡な人間って別に珍しくはないか……。

汚れた血

★★★★☆:1986年 フランス 原題 / Mauvais Sang
汚れた血 [DVD]

  • 監督:Leos Carax
  • 製作:Alain Dahan、Philippe Diaz
  • 脚本:Leos Carax
  • 撮影:Jean Yves Escoffier
  • 編集: Nelly Quettier

出演:Denis Lavant、Juliette Binoche、Michel Piccoli、Hans Meyer、Julie Delpy、Carroll Brooks、Hugo Pratt、Serge Reggiani、その他
 失神したJuliette Binoche―落下傘。デヴィッド・ボウイに釣られて、疾走を絵に描いて額縁に飾るDenis Lavant。バイクで疾走するJulie Delpy、ツンとした甘く切ない香り。そして、Juliette Binocheの最後の疾走。

ショック集団

★★★★★:1963年 アメリカ 原題 / Shock Corridor
サミュエル・フラー DVD-BOX

  • 監督: Samuel Fuller
  • 製作: Samuel Fuller
  • 脚本: Samuel Fuller
  • 撮影: Stanley Cortez
  • 音楽: Paul Dunlap
  • 美術: Eugene Lourie
  • 編集: Jerome Thoms 

出演:Peter Breck、Constance Towers、Gene Evans、James Best、Hari Rhodes、その他
 Samuel Fullerが、開陳して見せるのはアメリカの暗部。すべては、ピューリツァー賞への一本道ショック回廊を辿る旅路において起こった出来事。