降霊
出演:役所広司、石田ひかり、きたろう、岸部一徳、大杉漣、哀川翔、磯部詩織、井上肇、清水大敬、戸田昌宏、山本竜二、柏谷みちすけ、堀口一也、若林めぐみ、佐藤コージ、草磲剛、風吹ジュン、その他
音、色、光、痕跡的なもの/それらがざわめきたって画面への集中力を加速してゆくのは、消える、いる、いない、出てくる、だけど何故?そんなユーレイたちの物語だから。彼ら(それら?)を身にもたらすことの出来る降霊の霊媒ジュンコ(風吹ジュン)。そしてその夫(役所広司)は録音技師。その平凡な夫婦を襲う不条理な悪夢。それを転じて福となそうとするささやかな努力は、大方の予想通り事態をますます悪化させてしまう。
誰もが、そうとは知らずに誰かを追い詰めていく、そういうプロセス。そして自ら自分の首を絞めるように、もがくふたりを、ゆっくりと軋みつつ砕いてゆく、あくまで、不条理で、システマティックな歯車に対する、役所の強烈な反撥。乗り越えがたいものを乗り越えようとする、そのためには自分の幻影すら焼き尽さんばかりの『オイディプス王』的な運命との戦い。しかし結局は、土の中から伸びた泥だらけの手に、追いつかれる、そういうドラマ。それは、現代においては、ほとんど不可能となってしまった、どこか崇高な悲劇の幻を垣間見させると同時に、どこか滑稽ですらある独り相撲的なやるせなさを感じさせる。
また、風吹ジュンが平凡すぎるほど平凡な霊媒主婦を熱演。どうでもいいけれど「平凡な霊媒」って書いていてなんだか変な感じだ。でも、特別な能力を持つ平凡な人間って別に珍しくはないか……。